健康保険(被扶養者)(その2)

健康保険において、夫婦が共同して扶養する親族があるときに、その親族が夫婦のどちらの被扶養者となるかという問題がある。いわゆる夫婦共稼ぎ世帯の被扶養者の認定について、2021年8月適用の通達では新たな基準が示され、被扶養者の認定基準が具体化・明確化された。

まず、原則は、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの)が多い方の被扶養者とする。また、夫婦双方の年間収入が同程度である場合、すなわち、夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。

夫婦の双方又は一方が共済組合の組合員である場合、かつては被扶養者とすべき者にかかる扶養手当等の支給が行われているかどうかが事実上判断の基準になっていたが、現在は、当該被扶養者とすべき者にかかる扶養手当等の支給が認定されていればその認定を受けている者の被扶養者として差し支えないこと、また、扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはできないという点が明確化された。

夫婦の一方が国民健康保険の被保険者である場合には、被用者保険の被保険者については年間収入を、国民健康保険の被保険者については直近の年間所得で見込んだ年間収入を比較する。そのいずれか多い方が、主として生計を維持する者となる。被扶養者として認定しない保険者等は、その決定に関する通知を発出する。国民健康保険の被保険者は、当該通知を届出に添えて国民健康保険の保険者に提出する。被扶養者として認定されないことについて国民健康保険の保険者側に疑義がある場合には、届出を受理した日から原則として5日以内に、不認定の通知を発出した被用者保険の保険者等と協議する。そして、この協議が整わない場合には、直近の課税(非課税)証明書の所得金額が多い方が、主として生計を維持する者となる。
国民健康保険には被扶養者の制度はないので、以上の結果として、被用者保険の保険者等に被扶養者として認定されなかった者は、国民健康保険に加入することになる。

主として生計を維持する者が育児休業等を取得した場合、その休業期間中は、被扶養者の地位の安定をはかる観点から特例的に被扶養者を異動しないことになっている。ただし、新たに誕生した子については、改めて認定手続きを行うこととされている。

社会保険制度の細部の規定や頻繁に行われる見直しの内容など、複雑でなかなかわかりにくいものです。ご自身で確認するよりは専門家に聞いた方が早い場合も多々あります。ご質問、気になることなどがありましたら、お気軽にご相談ください。

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