健康保険(被扶養者)(その3)

健康保険における被扶養者認定は、保険料負担なしで保険給付を受けられる制度であり、被保険者により「主として生計を維持されている」ことが基本的な要件となる。この生計維持関係の認定基準は、被保険者と同一世帯に属しているか否かによって異なる。被保険者と同一世帯に属している場合、認定対象者の年間収入が130万円未満(60歳以上又は障害者は180万円未満)であり、かつ被保険者の年間収入の2分の1未満であることが原則的な要件である。ただし、この要件に該当しない場合でも、収入が130万円未満(同180万円未満)で被保険者の年収を上回らず、被保険者が世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められれば、総合的な判断により認定されることがある。一方、別居している場合は、年間収入が130万円未満(同180万円未満)であって、かつ被保険者からの援助額(仕送り額)より少ないことが要件となる。この場合の判断では、被保険者の年収そのものよりも、実際の援助額が重視される。年間収入には、給与のほか公的年金や失業給付等、全ての収入が含まれる。

近年の制度改正により、これらの要件は大きく変化している。まず、令和7年10月1日より、19歳以上23歳未満の者(被保険者の配偶者を除く)については、収入基準が従来の130万円未満から150万円未満へと引き上げられた。これは令和7年度税制改正における特定扶養控除の見直し等との整合性を図るための措置であり、大学在学等による教育費や生活費の負担が重くなることを考慮したものである。なお、年齢の判定は所得税法と同様に、その年の12月31日時点の年齢で行われる。

また、就業調整対策として、年間収入の判断方法についても重要な改正が行われた。令和8年4月1日より、原則として労働契約の内容に基づいて年間収入を判断する運用が開始される。これまでは過去の収入や将来の収入見込みで判定されていたが、改正後は労働条件通知書等に規定される時給・労働時間・日数・賞与等から算出することとなった。契約段階で予見できない時間外労働による賃金等は算入されないため、被扶養者認定の予見可能性が高まる。労働契約書等の書類がない場合は従来通り収入証明書等で判定されるが、給与収入のみの者は契約内容による認定が原則となる。

いわゆる「130万円の壁」への対応も強化されている。人手不足等により一時的に収入が増加し、直近の収入に基づく年収見込みが基準を超えた場合でも、事業主が一時的な事情である旨を証明すれば、迅速に被扶養者認定を継続できる仕組みが設けられた。この措置は当初、令和5年10月から暫定的に導入されたが、令和7年10月より恒久的な措置とされた。ただし、あくまで一時的な事情を対象とするため、同一の者について原則として連続2回(通常は2年間)までが上限とされる。基本給の上昇や契約変更による恒常的な増収は対象外である。

さらに、令和2年4月からは国内居住要件が追加されており、日本国内に住所を有すること、または留学中の学生のように日本国内に生活の基礎があると認められることが必要となっている。

このように、現在の被扶養者認定制度は、従来の収入基準を維持しつつも、税制との整合性や労働現場の実情に合わせた柔軟な運用へとシフトしている。特に若年層の収入制限緩和や労働契約ベースの判断導入は、扶養の範囲内で働く者の就業意欲を阻害しないための重要な改正点といえる。被扶養者を目指す際には、自身の年齢や世帯状況、そして労働契約の内容を精査し、最新の基準に照らして判断することが求められる。

社会保険制度の細部の規定や頻繁に行われる見直しの内容など、複雑でなかなかわかりにくいものです。ご自身で確認するよりは専門家に聞いた方が早い場合も多々あります。ご質問、気になることなどがありましたら、お気軽にご相談ください。

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