老齢厚生年金の受給権者が、その受給権を取得した当時、65歳未満の配偶者又は一定の子(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子及び20歳未満で障害等級の1級若しくは2級に該当する障害の状態にある子に限る、以下同様)の生計を維持している場合に、老齢厚生年金の基本年金額に加算した額が支給されることがある。これを加給年金額という。配偶者や子の生計維持に必要な費用(生計費)を保障しようとしたものだ。
この加給年金額は、老齢厚生年金の受給権者が、その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が原則として240以上(注)である場合に限り、支給される。老齢厚生年金の受給権を取得した当時、計算の基礎となる被保険者期間が240月に満たない場合は、在職定時改定又は退職時改定により当該月数が240以上となるに至った当時に、その者によって生計を維持していたその者の65歳未満の配偶者又は一定の子があるときに、加給年金額が支給される。
(注)いわゆる中高齢者の受給資格期間の短縮の特例に該当する場合は、被保険者期間の月数が240未満であっても、所定の期間(15年から19年)があれば、240月に達したものとみなされることがある。また、2以上の種別の被保険者であった期間を有する者の老齢厚生年金の加給年金額については、その者の2以上の厚生年金被保険者期間を合算して240以上となるかどうかを判断する
加給年金額は、配偶者については224,700円に改定率(国民年金法第27条によるいわゆる基準年度前改定率、以下同じ)を乗じて得た額、子については、1人目、2人目まではそれぞれ224,700円に改定率を乗じて得た額、3人目以降は1人につき74,900円に改定率を乗じて得た額(いずれも100円未満の端数は四捨五入)となっている。そして、配偶者に係る加給年金額についてのみは、当該老齢厚生年金の受給権者が昭和9年4月2日以後に生まれた者であるときは、受給権者の生年月日に従い約3万円~17万円の間で加算される特別加算の制度もある。
加給年金額は、対象となる配偶者や子が死亡し、あるいはその要件を満たさなくなったとき(すなわち配偶者が65歳に達した、配偶者が離婚した、子が18歳到達後最初の3月31日を経過した、一定の障害等級に該当する子が障害等級に該当しなくなったあるいは20歳に達した、生計維持関係が消滅したなど)のほか、子が受給権者の配偶者以外の者の養子となったとき、子が婚姻したときなども、加算されなくなる。
さらに注意したいのは、一定の場合に支給停止の措置が定められていることである。
すなわち、対象となる配偶者が、老齢厚生年金(年金額の計算の基礎となる被保険者期間が240月(原則)以上であるものに限る)、障害基礎年金、障害厚生年金など、老齢あるいは退職又は障害を支給事由とする一定の給付(繰上げ支給の老齢基礎年金は含まない)を受けることができるときは、配偶者についての加給年金額の加算が停止される。子についても、当該子について、国民年金法の規定により障害基礎年金に係る子の加算額が加算されているときは、当該子についての老齢厚生年金の加給年金額は加算されなくなる。 なお、これらのうち、障害を支給事由とする一定の給付や障害基礎年金の加算額については、その全額が支給停止となっているときは、老齢厚生年金の加給年金額は支給が停止されない。一方、老齢・退職を支給事由とする一定の給付の場合は、たとえその全額が支給停止となっていても、老齢厚生年金の加給年金額は加算されない。この点は、以前は老齢・退職を支給事由とする一定の給付の場合にも、その全額が支給を停止されているときは、老齢厚生年金の加給年金額は支給停止とならなかったのだが、2022年(令和4年)4月施行の施行令改正により改められた。
社会保険制度の細部の規定や頻繁に行われる見直しの内容など、複雑でなかなかわかりにくいものです。ご自身で確認するよりは専門家に聞いた方が早い場合も多々あります。ご質問、気になることなどがありましたら、お気軽にご相談ください。
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