国民年金制度は、憲法で定められた健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を全ての国民に保障するため、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯により防止しようとした社会保障制度である。その中で、障害により日常生活に著しい支障が生じた場合に備え、障害基礎年金の制度が定められた。これは、原則として、傷病に係る初診日に被保険者である者等(保険料を納めていた被保険者等)が障害認定日に一定以上の障害等級に該当したときに支給されることになっている。しかし、例えば20歳未満で就労する前の若年期に不幸にして重度の障害者となったような者についても、その将来の生活を保障する必要があることから、国民年金法では、傷病の初診日に20歳未満であった者が、障害認定日以後の20歳に達した時点で所定の障害の状態にあるとき等に、その障害の状態の程度に応じて障害基礎年金を支給することを定めている(同法第30条の4)。この20歳前傷病による障害基礎年金は、受給権者が国民年金の保険料の納付をせずに障害基礎年金を受給できるという意味で、いわゆる無拠出制の年金(本人の保険料の納付を基礎としない年金)である。この制度は、若年期に重い障害の状態となりその後の稼得能力の回復がほとんど期待できず、所得保障の必要性が高い者についても、保険原則の例外として一定の範囲で国民年金制度の利益を享受させるため、同制度が基本とする拠出制の年金を補完する趣旨で設けられた。
なお、初診日に20歳未満であっても、厚生年金保険の適用事業所に使用される者(国民年金の第2号被保険者)については、一定の支給要件に該当すれば、国民年金の被保険者として本来の障害基礎年金の支給を受けられるため、この20歳前傷病による障害基礎年金の制度は必要ではなく、仮に20歳前傷病による障害基礎年金の支給要件に該当しても本来の障害基礎年金の受給権と併合され一つの障害基礎年金が支給される。
20歳前傷病による障害基礎年金は、20歳到達日又は障害認定日が20歳到達後である場合は20歳到達後の障害認定日に受給権が発生し、その翌月分から支給が開始される。いずれにせよ支給は20歳到達後となり、それまでは、通常は親権者等により扶養されることが想定されている。支給額は本来の障害基礎年金と同様である(要件に該当すれば子の加算額も支給される)。
社会保険制度の細部の規定や頻繁に行われる見直しの内容など、複雑でなかなかわかりにくいものです。ご自身で確認するよりは専門家に聞いた方が早い場合も多々あります。ご質問、気になることなどがありましたら、お気軽にご相談ください。
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