労災保険に特別加入するための手続はどうしたらいいか。

まず、中小事業主等の場合は、労働保険の事務を労働保険事務組合に委託していることが条件の一つなので、労働保険事務組合を通じて「特別加入申請書(中小事業主等)」 を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し、その承認を受けることになる。これから委託する労働保険事務組合を探すなら、一般社団法人全国労働保険事務組合連合会(全国労保連)という組織があって、全国の労働保険事務組合(通常は事業協同組合、商工会議所、商工会等が労働保険事務組合の役割を担っている)をカバーしているので、こちら(又は各都道府県にある支部)に問い合わせれば教えてもらえる。連合会ホームページ上にも会員事務組合一覧が掲載されている。

海外派遣者の加入の場合は、派遣元の団体又は事業主が申請書を所轄労働基準監督署長を経由して労働局長に提出する。

一人親方等の特別加入の手続は、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行うことになっている。新たに特別加入団体を創って一から申請することもできるが、特別加入団体として承認されている団体に申しめば、加入手続きはその団体がしてくれる。具体的には、当該団体が特別加入に関する変更届を、労働基準監督署長を経由して労働局長に提出する。最寄りの特別加入団体については、都道府県労働局または労働基準監督署に問い合わせれば教えてもらえる。中には事務処理能力に乏しい団体や、労災事故時の手続を有料化して営利目的で運営しているような団体もあるようなので、実績のある確かな団体を選ぶようにしたい。

特別加入対象者となる一人親方や特定作業従事者の範囲については、労災保険法の施行規則に詳しく定められている。典型的には、建設業、運送業、漁業、林業、再生資源取扱者、船員等で労働者を雇用せずに働く一人親方、特定の農作業、家内労働、介護作業などを行う特定作業従事者が対象となるが、随時見直しが行われている。
例えば、仕事と家庭の両立支援・女性の活躍を促進する中で、家事、育児等の支援サービスの需要の増大が見込まれること等を背景に、2018年(平成30年)の改正で、家事支援従事者が特定作業従事者の一つに追加された。また、2021年(令和3年)4月には芸能関係作業従事者、アニメーション制作作業従事者が、同年9月には情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業の従事者(いわゆるITフリーランス)が特定作業従事者の類型としてそれぞれ追加された。
さらに、2021年(令和3年)4月の改正では一人親方として、柔道整復師が行う事業や、高年齢雇用安定法に規定する創業支援等措置に基づき高年齢者が行う事業が追加された。後者の高年齢者が行う事業とは、高年齢雇用安定法の2021年(令和3年)4月施行の改正により、新たに65歳から70歳までの就業を確保する措置(高年齢者就業確保措置)の努力義務が新たに規定されたことを受け、この就業確保措置の一部である創業支援等措置に基づき委託契約等に基づいて高年齢者が新たに起業する場合や、社会貢献事業等に従事する場合の労災保険の適用を可能にしたものだ。2022年(令和4年)以降も一人親方の類型としてあん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師や、歯科技工士が追加されている。

働き方が流動化・多様化している最近の社会情勢や、働く人たちを保護する必要性に応じて、労災保険制度も逐次見直しが行われている。

法の規定や頻繁に変わる通達の内容など、複雑でなかなかわかりにくいものです。ご自身で確認するよりは専門家に聞いた方が早い場合も多々あります。ご質問、気になることなどがありましたら、お気軽にご相談ください。

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